病院・クリニックの市場動向
日本の医療業界は、超高齢社会の進展に伴い医療ニーズが増大し続ける一方で、多くの課題に直面しています。特に、地域医療を支える中小規模の病院やクリニックでは、経営者の高齢化と後継者不在が深刻な問題となっています。
また、医師や看護師をはじめとする医療従事者の不足も、安定した医療提供体制を揺るがす要因です。2024年度の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げや医療DXの推進が掲げられ、経営の効率化と質の高い医療の両立がこれまで以上に求められています。
こうした背景から、事業承継や経営基盤の強化、地域における医療提供体制の維持を目的として、M&Aを積極的に活用する動きが活発化しています。異業種からの参入や、近隣の医療機関との連携によるグループ化など、M&Aの手法も多様化しており、業界再編の重要な選択肢として注目されています。
病院・クリニックのM&Aのポイント
ポイント①:許認可の円滑な承継
病院やクリニックのM&Aにおいて、最も重要な点の一つが許認可の承継です。医療法人の場合、株式会社とは異なり、社員総会での承認を経た出資持分の譲渡が一般的な手法となります。一方で、個人開業のクリニックを事業譲渡で引き継ぐ際は、一度廃止届を提出し、譲受側が新たに開設許可申請を行う必要があります。
これらの手続きは管轄の保健所や厚生局との事前協議が不可欠であり、非常に複雑で時間を要します。手続きに不備があると、M&Aの成立が遅れたり、最悪の場合、診療を継続できなくなったりするリスクも伴います。そのため、医療分野のM&Aに精通した専門家を交え、計画的に手続きを進めることが成功の鍵となります。
ポイント②:キーマンとなる人材の引き継ぎ
医療の質は、最終的に「人」に依存します。M&Aを成功させるためには、院長や長年勤務している看護師、医療事務スタッフといったキーマンの協力が欠かせません。特に院長は、地域での信頼や患者からの信望の源泉であることが多く、M&A後も一定期間は診療を継続してもらうなどの協力体制を築くことが望ましいです。
また、他の従業員の雇用を維持し、M&Aに対する不安を払拭することも極めて重要です。譲渡側と譲受側が、従業員の待遇や労働環境について真摯に話し合い、円満な引き継ぎを目指す姿勢が求められます。人材の流出は、提供する医療の質の低下に直結するため、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
ポイント③:地域医療における役割の理解
病院やクリニックは、単なる事業体ではなく、地域住民の健康と安心を支える社会インフラとしての側面を持っています。「かかりつけ医」として、長年にわたり地域との信頼関係を築いてきたケースも少なくありません。M&Aによって経営者が変わっても、その地域における役割や患者からの評判を維持・向上させることが、事業の継続的な成功に繋がります。
譲受側は、これまでの診療方針や地域連携のあり方を十分に理解し、尊重する姿勢が大切です。経営の効率化のみを追求し、医療の質が低下したり、患者とのコミュニケーションが希薄になったりすれば、築き上げてきた信頼は一瞬で失われてしまいます。地域に根差した医療機関としての価値を正しく評価し、引き継ぐ視点が不可欠です。
- 0円
- 1円
- 10万円以下
- 100万円以下
- 300万円以下
- 500万円以下
- 1,000万円以下
- 1,000万円〜3,000万円
- 3,000万円〜5,000万円
- 5,000万円~1億円
- 1億円~2億5,000万円
- 2億5,000万円~5億円
- 5億円〜10億円
- 10億円〜15億円
- 15億円〜20億円
- 20億円〜50億円
- 50億円〜100億円
- 100億円以上